野球は好きだ、無条件で好きだ。身体中の神経を、バットを振るその一点だけに集中する。バットが球を捕らえて振動する。手のひらに伝わる心地よい痺れ。全身の細胞が震えて、踊る。その瞬間が堪らない。
 俺には無条件で好きなものがもう一つある。ものっていうか人なんだけど――今教室の窓からグラウンドにいる俺を眺めている子。俺の親友、ツナ。ちっちゃくて可愛い。そして時々かっこいい、すげーやつ。

 ツナはいつもきらきらした目で俺を見る。ツナが言うには、俺はツナの憧れ、らしい。その目で見つめられると何だかくすぐったくなる。だって可愛いんだ、衝動的に抱きすくめてしまいたくなるほど。いつも頭を撫でるような感じで、肩を組むような感じで、そのノリで抱きしめたら、ツナはどんな顔するかな。獄寺曰く俺はスキンシップ過剰らしいから、抱きしめたこともスキンシップの一環だって思ってくれるかな。そしたらいつだってツナを抱きしめられるのに。

 教室のツナと視線が合った。ツナは俺に向かって、笑顔でヒラヒラと手を振った。可愛いなぁすげー可愛い。脳に甘い痺れが走る。全身の細胞が奮い起たされる、躍り上がる、ツナの笑顔は俺の全部を引っかき回す。心臓に甘い疼きが起こる。今すぐにでも走っていって抱きしめちまいたい。そんな衝動が沸き上がる。落ち着かない。ツナは笑顔でこっちを見ている。あぁもう!

「好きだぁぁぁぁぁっ!」

 目一杯息を吸い込んで、ツナに向かって、叫んだ。ツナは顔を真っ赤にして、慌てて教室の奥へ引っ込んでしまった。ちぇ。
 練習が終わったらソッコーでツナんとこ行って、抱きしめてやるんだ。きっと何であんな恥ずかしいことするの、なんて抗議されるだろうけれど、この際そんなのは聞かないことにする。
 だってこの胸のざわめきは、甘い疼きはきっと、ツナを抱きしめるまで消えそうにない。
 それでツナが笑ってくれたらそのときには、きっと何より堪らない瞬間になるんだ。












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「地球に生まれてよかったー!」的ノリの山本
この後学校ではしばらくの間「山本が誰かに告白してた!」という噂が流れまくることでしょう




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