「何でツナは女の子じゃねーんだろーなー」

 学校からの帰り道、山本が急に突拍子もないことを言い出すから、俺は唖然とした。

「だってさ、俺ツナのことその辺の女子よりもすげー好きなのに、俺たち男だから、抱き合ったりキスしたりとか普通しねーじゃん」

 何でツナ女の子じゃねーんだ、とか何とかぼやきながら、山本は空を仰ぐ。

「っていうか何で俺が女の子? 山本が女の子でもいいじゃん」
 勝手に女の子にされたことに文句を言うと、山本は平然とこう言ってのけた。

「え? だってツナの方がちっちゃいから女の子みてーじゃん」
 ――確かに。



 山本が俺を好きだと言うように、俺も山本が好きだ。一緒にいて心地いいのは山本だし、ずっと一緒にいたいと思うのも山本。
 でも女の子相手にするように、抱きしめあったり、キスしたり、極端に言えばエッチしたりできるかと問われれば、よく分からない。
 けど山本に彼女ができたりしたらきっと俺は嫉妬するだろう。山本が他の友達といるときだって、ちょっと嫉妬してしまうのに。
 でもそんなに好きでもやっぱり、女の子に抱くような恋愛感情とは少し違うような、そうでもないような。
 だって山本とエッチとか、できそうにない。
 っていうか、男同士ってどうやってするの?



「ずっと考えてたんだけど、やっぱ分かんねーわ」

 山本が突然言い出したので、男同士でエッチとかどうやってするのかなぁできないよぁとか変なことを考えてた俺は、え、エッチが?と言いそうになって、慌てて両手で口を塞いだ。

「何で俺男なのに、男のツナのこと好きなんだろーな」

 俺ってホモだったのかなぁ、と肩を落とした後、あーあツナが女の子だったら良かったのになーと、また同じことをぼやいた。



「俺だって女の子に産まれてくればよかったよ」
 俺が口を開くと、山本はすごくびっくりした様子で俺を見た。

「え、何?」
 釣られて俺もびっくりする。だって俺が女の子だったらとか散々言ってたのは山本じゃないか。

「だ、だってよ……」
 ――お前が俺に対する気持ちを言ってくれたのって、これが初めてじゃね?



 言われて、はっと気付いた。

「言ったことなかったっけ……」
「聞いたことねーし!」

 山本はあははと笑いながら、俺の頭をぐしゃぐしゃと撫でた。

「それってさぁ、ツナ」

 今度は意地悪な顔つきになって、山本は俺に問う。
「俺がツナに対して思ってるような気持ちを、ツナも俺に対して思ってくれてるってことでいいの?」

 俺の顔を覗きこみながら言う。
 何でだか耳が熱くなってるような気がした。

「た、多分……そうだと……思う……」

 最後は殆んど消え入りそうな声だったかもしれない。
 それでも山本は満足げな笑みを浮かべて、今度は「女の子だったらいいのに」よりももっと突拍子もないことを言った。



「なぁ、キスしてみてもいい?」












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健全な男子中学生です



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