※ただの下ネタです
ミルク色の床の上を泡が滑る。シャワーのお湯といっしょくたになって排水口に吸い込まれていく。湯気の奥にはボディーソープを原液のまま自分の腹に一生懸命擦り付けている綱吉の姿ががぼんやりと見えた。
「……そんなにしなくても良くね?」
綱吉の仕草に山本は少しだけ傷付いた。綱吉の腹にねとりとこびりついていた二人分の白濁は謂わば証拠である。己の残滓が綱吉の手によって洗い流されてゆくのは何だか切なかった。普段は無感情にティッシュにくるんで捨てているくせに、こう言うときだけは愛しく感じられるのは何故だろう。いやそれとも、己の体液に愛情を寄せるのはただの変人だろうか。
「だって嫌なんだよ、お湯で流すだけだと感触が気持ち悪い」
そう言いながら綱吉は然程泡立っていないボディーソープを腹の上にくるくると滑らせた。
「何か取れてない気がする、っていうか、ぎゅっぎゅってなる」
眉間に少し皺を寄せたまま、困ったように呟いた。蛋白質がお湯で固まって、ますます肌にまとわりつくのだ。まるで接着剤のように。
「ツナから離れたくねーんだろーなー」
何言ってんの、とでも言いたげな表情で綱吉は山本を見た。たかが精液に、なに想いを巡らしているんだか。そりゃーこれが新しい命の基になるわけだけれども、セックスするたびにそうやっていちいち精液に同情してたら、自慰やセーフセックスや自分たちが男同士でやってる不毛なセックスだって否定しなきゃいけないことになるだろうに。
「あー、そっかー」
山本は狭い湯船の中で大きく伸びをした。説明を終えた綱吉は、やれやれと肩を落として腹の上の泡を洗い流す。白い泡がシャワーでするする落ちて、こびりついていた残滓は残らず排水口へ消えていった。呆気ないものだ。
「つーな」
甘えた声で山本が呼ぶ。その声に綱吉はシャワーを止めて、山本一人で十分狭い湯船に、膝を丸めて浸かった。その質量に湯船からお湯が溢れる。水音が勢いよく床の上を滑った。
向かい側に相手がいると、足を伸ばせなくて窮屈。そう視線で訴えると、山本はまぁいいんじゃない、と表情で答えた。遠慮なく綱吉は山本に背を向けて湯船に浸かり直す。口に出さなくてもある程度の諾否が分かるのはお互いの良いところだ。姿勢を変えると、じゃぷんと音をたてて水面が波打った。
「俺、ツナから離れたくねーな」
綱吉を背中から抱き寄せて山本は言う。
「、うん」
何と返せばいいか分からずに、綱吉はただ相槌を打った。まだセンチメンタルに浸っているのだろうか。たかが体液で感傷に浸れる山本を、綱吉は密かに尊敬した。
「ツナの子供が欲しい」
「はぁ」
「やっぱさぁ、何か、残したいじゃん、無理だって分かってんだけど」
気持ちは分からないではないが、それはどうしたって無理だ。少なくともセックスでは無理だ。綱吉はそう思っているが、山本はそれなりにセックスというものに重点を置いているらしい。どうしたものかと思案していると、背後から急に萎えた性器を握られて、綱吉はぎゃあと悲鳴をあげた。
「な、何すんだよ!」
「ツナ、俺、思いついた」
背中にのし掛かるように体重をかけられて、掌の中の性器を人質に。山本は綱吉の耳元でこう尋ねた。
「中出ししていい?」
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