床に何重にも敷かれた服やタオル。俺はその上に押し倒された。山本が覆い被さってくる。憧れていた端正な顔がすぐ近くにある。俺は何だか怖くて、敷いてあったタオルの端っこをぎゅっと握りしめた。震えていたと思う。山本は俺の手をそっと掴んで、自分の背中に誘導してきた。だから俺はその背中に腕を回してぎゅうとしがみついた。応えるように山本が俺を抱きしめる。情けないくらい震えてる俺をあやすような仕草だった。
「……止めようか?」
山本が訊いてきた。
「や、やめない……!」
声まで震えている。山本は俺の言葉を聞くと、俺の唇にそっとキスをしてきた。当然俺はキスなんか初めてで、っていうかキスより他人にケツの穴触られるのが先だったってどういうこと?って一瞬思ったけれど、山本が角度を変えた小さなキスを何度も俺の唇に落として、それが妙にエロくて気持ちよくて、いつの間にかまた下半身が疼いちゃってて、もういっそ早く、震えなんか分からなくなるくらいめちゃくちゃにして欲しいと思った。
「ほ……欲しい、よ……!」
唇が離れた隙にそう絞り出した。恥ずかしい。自分がこんな恥ずかしい言葉をポンポン吐けるやつだとは知らなかった。
山本の舌が俺の唇を割って口の中に入ってきた。どうしたらいいか分からなくて、俺はされるがままになっていた。熱い。ぐちゃぐちゃと俺の口の中を犯しまくった舌が出ていって唇が離れてった頃には、身体中の力が抜けてしまった感じになっていた。山本の手が俺の太股を支えて、ぐっと腰が持ち上げられる。そしていよいよ山本のソレの先がソコに押し当てられて、俺はまた硬直してしまった。怖い。怖い怖い怖い。
「い……痛くしないで」
つい女の子みたいな台詞を言ってしまった。山本は少し笑うと俺の額に軽くキスをしてきた。それから指に唾液を吐き出してソコに垂らす。
「……力、抜いて」
俺は目を瞑った。できるだけ身体の力を抜いたつもりだったけど、上手くできたかどうか分からない。固いものがぐりっとソコに押し当てられて、山本がぐぐっと体重をかけたら次の瞬間、ぬるっとした衝撃と違和感が俺を襲った。
「――……っ!」
言葉にならなかった。思ったより痛くなかったけど、重い違和感がそこにはあった。無理矢理大きく広げられた穴が、元に戻ろうとして収縮してるみたいな感覚。
「ツナ……大丈夫?」
山本が俺の顔を覗き込む。俺は浅く息をしながら何とか頷いた。
「最後まで入れるから、力抜いてな」
山本がさらに深くまで腰を進めてきた。何となく内臓が押し上げられるみたいな感覚があって、あとは穴が擦れる奇妙な感覚ばかり。そのうち山本の腰がぴたっとくっついて、あぁ、入ったんだなって分かった。
「は……入った、」
はは、と山本は力なく笑う。ああ、俺、ホントに山本とセックスしてるんだ。何か意味もなく泣けてきた。ちょっと感動とかしちゃってた。俺ホントに山本と一線越えちゃったよ、いいんだろうか?
「ツナ、俺、ツナが好きだ」
眉間にシワを寄せた山本が俺の顔を覗き込んで言った。
……えっ?
「は……、あ、えっ」
「わりぃ、無理、動くから」
「ちょ、ぁっ!?」
山本は俺の腰をつかんで小刻みに揺さぶってきた。結合部の粘膜が擦れて背中がぞくぞくするような変な感覚が押し寄せてくる。山本の腰の進め方は次第に激しくなってきて、一度俺の腰を抱え直したあと更に激しく揺さぶってきた。その拍子に角度が変わったのか、山本が動く度にじわりと下腹部に熱が滲む感覚が起こるようになった。それがじれったい甘い疼きで、俺の口からはいよいよ喘ぎ声らしい喘ぎ声が溢れ始める。
「あっ、や、山本っ、そこっ」
「気持ちいい……?」
「ぅ、んっ……!」
気持ちいいなんてもんじゃなかった。下半身の中身がドロドロに溶けてどっかへ行ってしまったみたいな感覚で、ソコは山本のソレとズルズル擦れて、俺の身体の一部じゃないみたいだ。じんわりぼんやりしていた快感が次第に輪郭をなしてきて、身体の反応に現れる。
「やっ、やだっ、何か来る……」
「大丈夫……そのまま、力抜いて、」
山本はもう一度俺の腰を抱え直して、ガツガツ腰を振ってきた。俺も訳が分からなくて、そのまま快楽に身を委ねていたら、その頂点は急にやって来た。
「ぅあ、あぁぁっ、ダメっ……!」
甘い疼きが急速に絶頂まで登り詰めた。山本を受け入れていたソコがきゅうっと締まる。
「……ツナ……!」
山本は一度大きく腰を動かした後、奥に突き入れてから精を吐き出した。びたびたと吐き出される液体の感覚が妙にリアルで、俺は微かに身震いをした。
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