「ペンになりたい」
目の前の山本が俺の顔をガン見しながら真顔で言った。俺は意味が分からなくて、山本を黙って見つめ返す。
「俺、ツナのシャーペンになりたい」
そう言いながら山本は俺の右手に握られているシャーペンに視線を落とした。つられて俺も視線を落とす。中学校に入学したときからずっと使っている青いシャーペン。その辺で売っている何の変鉄もないそれは、宿題の第五問目の答えを書き終えたところだった。
俺は意味が分からなくてもう一度山本を見つめた。山本は真剣な表情で、まだ俺のシャーペンをガン見している。
「いいな……ツナに毎日触られて大事にされて」
山本はそのままブツブツ独り言のようなものを言い始めた。まるで呪詛のようだ。俺はちょっと怖くなってきた。
「や……山、本……?」
恐る恐る呼んでみたものの、山本はすっかり自分の世界に行ってしまっているらしい。シャーペンを見つめるその表情は、まるでシャーペンがライバルか何かみたいだ。一体どうしてしまったと言うのだろう。山本にどこか少し変なところがあることは知っていたけれどまさかシャーペンにまで嫉妬する人間だとは。
「毎日握られて……先っぽぐりぐり擦り付けられて……あ、勃ってきた」
もうやだこの男。山本は自分の股間に視線を落としてから俺の顔を見た。そして口角をつり上げると宿題そっちのけで俺ににじり寄ってくる。
「なぁツナ……俺のも握って」
何だか変質者みたいになってきた山本。自分の頬がひきつっているのを感じながら俺は後ずさる。そのうち背中が壁に到達。絶体絶命。ちらと視線を落とすと山本のジーンズは確かにテントを張っていた。山本が俺の手を取って自分の股間に導く。既にすっかり硬くなったそこに触れて俺はまた恥ずかしくなった。山本はやることがいちいち変態ちっくだ。同じ男として、すこしの刺激でそうなってしまうのはよく分かる、分かるけれども。
「……俺のペン、ツナに突っ込んでいい?」
俺はとりあえず、そのペンをいつか折ってやろうと思ったのだった。
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