いいいやだやだやだ動かないで。ツナは必死で頭を振る。額にも背中にも異常なくらい汗をかいていて、手のひらで撫でるとぬるりとした。意識して浅く息をしているようだ。深呼吸は冷静さを呼び戻すから。
アダルト動画の真似事をした。大丈夫そうじゃんなんて軽々しく口にしてしまったことを今更ながらに後悔する。挿入したまま背中にのし掛かってその首筋をべろべろ舐めたらツナは悶えた。やだ、それもやだ。感じてるんじゃないの。そう問うとツナはわかんないぃぃと変な声を出した。何か気持ちいいんだか悪いんだか分かんないよすごいムズムズして気持ち悪い。そう言って手で俺の顔を退かした。
上手くいかないもんなのな。俺の独り言に、ツナはそりゃそうだろぉ、と返してきた。あの女優はあんなに喘いでたのに。やっぱりいきなりこんなことしても気持ちいいわけないよな、ここ入れるとこじゃないし。改めて考えてみたら、自分たちがいかに無謀なことをしたか分かった。あんなもん見たからって燃え上がっちゃって勢いですることじゃないよな。
ツナの足はガクガク震えていた。そろそろ可哀想かな、と思う。でも俺こんな半端な状態で、どうしろって言うんだ。
ゆるりと腰を動かしてみた。ん、あ、う、と途切れ途切れに声があがる。なぁ、どんな感じ。訊ねると、何か身体中ぞくぞくして気持ち悪い、やだ、と返ってきた。それ気持ちいい、の前兆じゃないの。俺の言葉にツナはとんでもないという風に首を横に振った。そんなこと言うなら山本もやってみればいいんだ。え、俺が?一瞬想像して気持ち悪くなった。全然可愛くない。やっぱり「される側」はツナみたいな可愛い子がいいんじゃないのか。
思考が逸れた。止めるか、と訊ねるとツナはそれもやだぁぁ、と言ってきた。どうしろって。
山本に気持ちよくなってもらうまでやめない。ぼそりとツナは呟いた。無理しなくていいのに可愛いな、やっぱり可愛い。ゆるゆる動作を再開する。汗が体温を奪ったせいですっかり冷えてツナの背中は冷たくなっていた。っていうか多分冷や汗なんだろうな、これ。ますます可哀想になったけれど、このまま中途半端に放り出されたら俺の息子だって可哀想だ。わりぃ、ツナ、我慢してな。腰を動かす度に、ひぁ、あ、う、と声が漏れる。
またべろりと首筋を舐めた。ぁうぅ、何かもうわけわかんないよぉ、と泣きそうな声。めちゃくちゃだ。
そうだ。俺、今、ツナをめちゃくちゃにしてる。それってすげー、いいかも。
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