俺だけがそうであることを知っていて、見て見ぬふりをした。ツナの気持ちなんか知らない。ただ、彼は拒絶をしないから。気が向いたときに手を出して、抉るように貫いて貪るように突き上げてもツナは拒絶をしなかったから、幾度も幾度も、その態度に甘んじた。
 誰でもよかったのかもしれない。とりあえず身近なツナに手を出したのかもしれない。今となっては分からない。ツナは絶対に俺を拒まない、それを知っていて、そこにつけこんだのかもしれなかった。そういうことを女の子としようとはあまり思わなかった。多分女の子は触ったら気持ちいいんだろうということは分かっていて、俺が好きだと言う女の子はたくさん居たけれど、女の子と遊ぶよりツナと遊んだ方が楽しいのは既に分かりきっていたので、わざわざ面倒な女の子とのオツキアイというのはしたくなかったのが正直なところ。それに俺はツナが気に入っていたから、女の子と付き合い出した俺からツナが離れていくのは嫌だった。ツナなら気を使ってそういうことをしそうだから。俺は欲張りだ。

 だからツナが黙って俺の前から姿を消したときも、ああそうか、位にしか思わなかった。仕方のないことだと思った。ツナはもう俺の顔なんか見たくもないだろう。ツナは拒絶しなかったけれど、同意もしなかったのだから。もしかしたら嫌々ながら俺に身体を開いていたのかもしれない。優しいツナのことなら有り得る話だ。黙って消えたのも俺に気を使ってのことなのかもしれない。今となっては分からない。

 一方的に貪った。俺があの、発達途中の痩せっぽっちの身体に欲情していたことは紛れもない事実で、収まりのつかない苛立ち混じりの欲望を、あの小さな身体ひとつで受け止めていたんだ、ツナは。俺は俺の激情を手当たり次第ツナにぶつけて、ツナは文句ひとつ言わずにそれを受け止めていた。
 何故だろう。理由は聞けなかった。聞くのが怖かった。聞こうともしなかった。そうこうしている間にツナは俺の前から姿を消した。

 そうしてマフィアごっこが終わっても、剣道は辞められなかった。ツナに対するせめてもの罪滅ぼしかもしれなかった。剣を振るうことだけはツナのために、ツナを守るために俺が唯一出来ることだったから。

 俺の元に一通のエアメールが舞い込んだのは、ツナが消えて一年が経った頃だった。まさに、不意打ちだった。忘れようとしていたのに、罪悪感が背中から這い上がってきた。恨み辛みを込めた手紙なら、まだ諦めがつく。でももし万が一に、そうでないなら。変な期待を持ってしまいそうで、嫌だった。
 封は切らなかった。机の引き出しの中に仕舞って三日間、知らないふりをした。そうして三日後、思い出したように取り出してみる。縁の赤青白を視線でなぞった。しかしどうしたって封を切る気にはならなかった。期待と不安で押し潰されそうだ。合格通知のようだ。この度はご応募いただきありがとうございました、選考の結果あなたは。

 ツナはどんな意図でこれを書いたのだろう。どんな気持ちで文字をしたためたのか、俺には到底分かるものではなかった。きっと封を切れば全ての謎が解けるのだと知っていた。一年前のこともそれよりもっと前のことも今現在のことだって。
 結局封を切ることはできなかった。その代わり、財布と通帳と読んでもいないエアメールと携帯を使い古した鞄に突っ込んで部屋を飛び出した。店に顔を出して、親父に声をかける。俺しばらく出かけてくる。親父は俺の顔を見て何かを察したのか、からかってきた。おう、女の尻でも追っかけにいくのか。俺は答えた。いや、男だ。








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